強引社長といきなり政略結婚!?

「なんだ、汐里。随分と早いじゃないか。もっとゆっくり一成くんと話してくればいいものを」


私のほうへ悠々と歩きながらやってくる。


「もう十分です」

「それでどうだった? イイ男だったろう?」


どういうところをもってして“イイ男”というのか、私にはわからない。基準とするものさしを持てるほど、男性のことを知らないからだ。


「すごく強引な人」


彼を表す言葉は、もうそれしか思い浮かばない。


「男はそのくらいじゃなきゃ。ここぞという時に遅れをとりかねないからな」


父には、なにを言っても無駄かもしれない。
彼のことをどう表現しても、すべて長所として捉えるだろう。すっかり彼の虜だ。
娘の私より、父親の心を掴んでいる朝比奈さんに、ちょっとした嫉妬を覚えた。

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