強引社長といきなり政略結婚!?

そこに突進する勢いで出向き、「ご注文は」と無愛想に聞いた。


「この前は楽しかったよ」


あのドライブが楽しかったとは。女性の好みといい、朝比奈さんの嗜好はことごとく理解不能だ。


「ご注文は」


にこやかに言う朝比奈さんを無視して繰り返すと、不意に彼の手が私のほうへと伸びてきた。私の頬を軽くつねる。


「そんな顔しないで。せっかく顔を見にきたんだからさ」


私は来てほしいと言った覚えはない。勝手に来ておいて、それはないだろう。
彼の手をやんわり外した。ペチッと叩かずにこらえただけありがたいと思ってほしい。


「なににいたしましょうか」


もう一度尋ねると「ナポリタン」と、前回と同じ注文だった。


「かしこまりました」とその場を離れる。

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