オフィスに彼氏が二人います⁉︎
Four
翌日。

会社へ向かう足取りが酷く重かった。とは言え、当然ながら仕事を休むわけにはいかない。


本部勤務の時山部長とは、営業時間前にすれ違うことはほとんどない。

だけど同じ営業室で働く久我くんとは、顔を合わせないわけにはいかない。


なんだか、すごく複雑な気分だ。久我くんへの恋心を自覚したとはいえ、昨日彼にされたことはまだ怒ってるし、簡単には許せないから。
だから、何をどう話せばいいかがわからない。私はとりあえず、営業室に入るための自動ドアの前で深呼吸を数回繰り返す。

その時。


「おう、七香おはよう」

「っ!」

驚きすぎて身体が固まってしまい、振り向くことはできなかったけど、後ろから声を掛けてきたのはなんと久我くんだった。
久我くんに会いづらいがためにこの場所で立ち止まっていたというのに、まさか二人きりになってしまうなんて。こんなことなら営業室で顔を合わせた方がまだ良かった。


……でも久我くんは今、まるで何事もなかったかのような口調であいさつしてきたな。
勇気を出して振り向くと、「どうした?」と、いつも通りの笑顔を向けていて。


……気まずくなるのは嫌だけど、ちょっとは気にしててほしい。恋心を自覚した後だというのもあってか、そんな風に思ってしまった。



……すると、彼は。



「あのさ、七香」

「……何?」



「もう、別れようぜ」




……え?
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