狼社長の溺愛から逃げられません!
 

社長の出張の予定は十日間。
その十日がすごく長く感じる。

その間は社長の顔も見れないし声も聞けないしキスもできないし触ってもらえないし……。

「……って、なにを考えてるんだっ!」

あの夜のことが勝手によみがえって、甘い記憶を振り払うように勢いよく首を左右に振る。

「美月ちゃん、どうしたの?」

そんな挙動不審な私に、華絵さんが不思議そうに首をかしげていた。

「な、なんでもないです!」

慌てて手に持っていたメモをたたんでポケットに押し込む。そんな私を見て華絵さんはくすくすと笑った。

「社長が海外出張だから寂しい?」
「え!? いや、そんなことはぜんぜんっ!」

図星をつかれ、ぎょっとしながらなんとか誤魔化す。

はじめて社長にキスされたことは華絵さんに相談したけど、そのあとはなにも言ってなかった。
だって、付き合ってもいないのに何度もキスをしたり、ホテルで一緒に過ごしたりなんて、そんないい加減なことをしてるって知られたら絶対軽蔑されるから言えない。

 

< 160 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop