狼社長の溺愛から逃げられません!
「そんなことないです。社長も同じように小笠原さんの書く批評に嫉妬してライバル心を持っていると思います」
映画の宣伝にどんなに長い時間頭を悩ませ工夫しても、たったひとつの批評で動員数が大きく変わったりする。
そんなとき、人の心を動かす文章をかけるその人に、ひどく嫉妬する。
公平な立場から発信するからこその影響力。
文章だけで人を劇場に向かわせたりためらわせたりできるなんて、毎日映画の宣伝のためにかけまわっている私から見たら、まるで魔法使いだ。
小笠原さんはそんな批評を書く評論家だ。
缶ビールを強くにぎりしめながら言うと、小笠原さんがふっと笑った。
「あんた面白いなぁ」
「そうですか?」
からかうような感心するような口調で言われ、私は戸惑いながらビールに口をつける。
「そういえば、さっきからずっと電話が鳴ってるみたいだけど大丈夫?」
そう言われ、慌ててバッグに目を落とす。
中からスマホを取り出し画面を見ると、ものすごい着信数が表示されていた。