キミとひみつの恋をして


スポーツドリンクの入ったペットボトルを両手で包みながら、はにかむ二ノ宮を観察していたら、薄く形のいい唇が開く。


「……今からズルいこというよ」


そう声にして、彼は花火を眺めながら続ける。


「桃原と付き合えれば、それだけでいいと思ってたんだ。でも最近、もっと、もっとって桃原への気持ちが大きくなって、桃原が誰かといるの見ると独り占めしたくて、掟うぜぇーってなってる」


それは、ズルいけれど、嬉しい告白だった。

思わず私の頬が熱を持ってしまうほどの言葉たち。


「極論だけど、人なんていつ死ぬかわかんないんだから、内緒にしてないで桃原との時間を満喫したいな、とかさ。そういう思いが最近強い」


ああ、同じだ。

私たちは、同じ気持ちを持ち、同じように互いを求めている。

私たちが恋人として接する時間は、障害のない恋人同士と比べるとやはり少ない。

だからこそ、我慢する時間が増える合宿の今は、自由に触れたいと、恋をしたいという思いがいつも以上に強く出てしまうのだろう。


「引退まで、長いな」

「うん……」

「いっそ交渉してみんのとかどうかな」

「その時点で最低限、恋愛してるのはバレちゃうよ」


そもそも、交際禁止ではなく恋愛禁止なのがやっかいなのだ。

これだと付き合ってないからというギリギリの言い訳もできない。

体だけの関係になるのも恋愛とみなされるらしくダメなのだ。


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