あの空を越えて逢いにいく。
周りを歩く生徒たちが
追い越しざまに私をチラチラ見てる気がする。






多分、気にし過ぎの思い込みだとは思う‥‥


だけど私は
思いっきり下を向いて歩いてしまう。



もう私を隠してくれる
あの分厚い眼鏡はない。


いつもうつむくと眼鏡を弄っていた手が宙ぶらりんになって、手のやり場にまで困る。













「朝から陰気くせー」

「!」


ドキッとして顔をあげると
校門の所で逢坂くんが立っている。




「お、逢坂くん!」


なんだかホッとして
私は逢坂くんに駆け寄る。




「お、おはよう!偶然ですね」

「いや、待ってたけど」

「えぇえ?」




校門を通り抜ける周りの女の子たちがみんな、逢坂くんの方をチラチラ見ながら頬を赤くしてキャーキャー言ってる。


逢坂くんはそれを一切気にする素振りなく
私に話し続ける。




「今日はお前緊張で顔ひきつってると思って」

「あ、はは‥‥はい」




図星すぎて縮んでしまう。


それと、このやたら注目され
ジロジロされるのにも慣れなくて

猫背気味になってしまう。




そういえば逢坂くんと学校で
みんなの前で一緒にいるのはこれが初めて。


逢坂くんはいつも、こんなに視線を浴びて
学校生活を送っていたんだ。




「ん」


逢坂くんは握手するときみたいに
手を差し出してくる。




「え?」

「手ぇつなご」

「!」




ここで?今??

そんな事したら‥‥



周りの生徒(特に女の子)に
なんて誤解されてしまうことか‥‥!




「あの、今はそのなんて言うかその‥‥やめておいた方が」


「でも俺さっきから気分ちょっと悪いんだよね」

「え?」

「あーマジで倒れそう」




逢坂くんは顔をしかめてフラッとする。


「!だ、大丈夫ですか?」



あのプールの一件以来、
霊関係には敏感な私。


私は慌てて逢坂くんの手を両手で
包み込むように握る。




その瞬間、

私の手の指に逢坂くんの長い指が絡まり
キュッとつながれる。




「!」

「成功」



驚いて逢坂くんを見ると
してやったりって感じで私を見た。



や、やられたぁ~‥‥



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