渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
「カルデア、よく頑張ったな」
「っ……私は何も、皆の助力のおかげだわ」
涙で歪んだ視界は、ガイアスと話していく間もどんどん世界を歪めていき、頬に温かいモノが伝った。
ガイアスはカルデアの肩を抱き寄せると、前を見つめたまま、口を開く。
「お前という存在が国と国を結び、弟に国王となる決意をさせた。お前は、国を救ったのだ」
「っ……!」
(いつも、王女なのに何も出来ない自分が情けなかった……。でも、ようやく国のために、この身を役立てる事が出来たのね)
それは、政略結婚の道具としてではなく、国と国との橋渡しとしてだ。
泣いているカルデアの顎を掴んで、ガイアスは顔を上げさせた。
頬に伝う涙の跡を辿るようにして、ガイアスの指が触れる。
「お前の涙は、いつ見ても美しいな」
「そんな、事……っ」
「いつも、誰かのために泣いている。その優しい心が、涙を宝石のように煌めかせるのだろう」
ガイアスの瞳が間近に迫り、心臓が大きく跳ねた。
(ガイアス……)
ガイアスは涙の一滴さえも愛しいというように、唇で触れていく。
「やはりお前は、香りも涙も甘い」
「そんな、涙はしょっぱいでしょう?」
香りは別として、それは言い過ぎだとカルデアは苦笑いしながら小首を傾げる。
「何を言う、お前はどこもかしこも、果実のように甘い」
そんなカルデアに、ガイアスは当たり前だと言わんばかりに自慢げに笑ってみせた。
(ガイアスったら……)
その瞳にほんの少しの熱が孕んでいる事に気づいたカルデアは、顔から日の出るような思いをした。