渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
「だからこそ、アイルは王の解任議会を、今ここでするつもりなのね……」
国王を引きずり落とすために、大臣達の利益になる条件を突きつけ、納得させる必要がある。
それが出来るのは、他国の王であるガイアスや王女であるカルデアが圧力となって存在する今しかない。
(アイルは、これを好機と見定めた……)
カルデアは少し離れていた間に、立派になったアイルの姿を見つめて、誇らしい気持ちになる。
案の定、事はうまく運んだ。
大臣達からは王の解任について次々に賛成票が集まり、ついに可決されたのだ。
「う、嘘だー!」
国王は叫びながら、兵士達によって牢へと引きずられていく。
カルデアは安堵して、息を吐き出した。
同時に、胸に寂しさも連れてくる。
「それでもいつか、父様に会いにゆきます」
「カルデア……」
「あなたの……たった一人の娘として、父であるあなたに」
カルデアは堪らず、引きずられていく父にそう伝える。
すると、国王は目を見張って、すぐに泣きそうな顔で「カルデア」と名前を呼んだ。
「っ……」
(父様……っ)
名前を呼んだ事にどんな意味があるのかはわからない。
けれど、カルデアの耳には、娘に向けた謝罪のようにも聞こえた。