渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
「私はこの国の王女。身内の不祥事は、身内が責任を持たなくてはならないわ」
「カルデア姉様!!」
「遅かれ早かれ、私にも結婚の話は来ていたはず。それが今だったというだけ、気に病むことは何も無いのよ」
優しく微笑んで、馬上からアイルに手を伸ばせば、今にも泣き出しそうな顔でその手を強く握られる。
(姿は大人になっても、私にとってはまだまだ可愛い弟だわ……。出来ることなら、あなたが王になるまで、側で支えたかった。でもそれは、出来ないから……)
「アイル、あなたはこの国の王になる。私は、あなたが治める国ならば、民にも笑顔が戻ると信じているわ」
「カルデア姉様……ですが、私は何も出来なかった。現にこうして、救いたい人を救えずに、私は見送ることしか出来ないのです」
項垂れるアイルに、カルデアはそれは違うと、首を横に振った。
「あなたは、私の唯一の希望。この国を頼みましたよ、アイル」
「っ……それが、カルデア姉様の願い……ですか?」
「えぇ、心からそう願うわ」
カルデアは強く頷いた。
それを見届けたアイルは、カルデアの言葉を胸に刻むように、静かに瞼を閉じる。
そして、もう一度目を開いたアイルの目には、一点の迷いもなく、送り出す決意を固めたことが、カルデアにもわかった。