渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
「そんな綺麗なモノを救うことで、汚れた俺達も救われるような気がするんだよ」
「トールさん……」
「それじゃあ、そろそろ行くな?また、話をしよう王妃様」
手をヒラヒラと振って、去っていくトールに、カルデアは静かにベッドへと戻った。
そして、お盆に乗せられた一切れの硬いパンを千切って口に運び、すぐさま冷えたスープで流し込む。
食事はこれとミルクのみ。それでもカルデアは、さほど抵抗は無かった。
アルナデール国での食事も、なるべく民の食事に近づけて生活してきたせいだろう。
傍から見れば質素なのだろうが、カルデアは毎日運ばれる食事に、贅沢だなと思ったほどだ。
「ごちそうさまでした」
食事を終えると、小窓に空になったお皿を置いて、部屋にある唯一の窓である天窓を見上げる。
イナダール国はカルデアのいた雪国とは違い、南国の暑さが一年中続く。
最初はその暑さに参りそうになっていたカルデアも、こうして塔に幽閉されてからは、差し込む日差しもほとんど無いために、暑さもさほど感じなくなっていた。
「どうか、アルナデール国、イナダール国に生きる者達が、幸せでいられますように」
両手を合わせて祈りを捧げる。
(塔に幽閉されている私には、他に出来ることがないわ。それが、とても歯がゆい……)
こうして祈ることは、カルデアの日課になっていた。