渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
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二日前。
ナディア国、国王ガイアス・ナディアは、命かながらイナダール国より逃亡してきた船員より、貿易船が捕虜として捕らえられた事を聞かされていた。
「捕虜となった理由はなんだ?」
ガイアスが謁見の間で問いかけると、船員はビクリと肩を震わす。
ガイアスは情に熱く、船員を捕虜にされた事に腹を立てていた。
その怒りが船員に伝わったからだろう、怯えたように唇を震わせながらガイアスを見上げている。
「イ、イナダール国の海域に侵入したと……ですが、私共は決してイナダール国の海域に侵入してはおりません!むしろ、待ち構えていたように、船がいくつも止まっていたのです」
「ほう……初めから、我が国の貿易範囲を知っていて、襲った……という事か」
(あの狂った国王ならば、やりかねない。何が目的なのかは知らんが、民をみすみす死なせるわけにはいかないな)
ガイアスは王座から勢い良く立ち上がり、船員の前へと進みでると、床に膝をついた。