(完)嘘で溢れた恋に涙する
「何がよくしてもらってるね。悪かったね。今まで酷か態度ばとってきて。よくしてもらいよったとはうちの方ばい。今までようこんな婆さんのために働いてくれた、その給料と思ってくれればよかけん」



おばさんはそう言いながら、微笑んでお母さんの肩を撫でた。



お母さんはそのおばさんの変貌ぶりについていけずに固まっている。



おばさんはそんな様子に気づいたのか、私がお母さんに言わないで欲しいと言った部分は避けて、簡単に事情を打ち明けた。



「昨日、由姫ちゃんには話したとけど、色々事情があって今までひどく当たってしまった。
申し訳なかった」



そう言って頭を下げた。



さっきからみんなが謝ったり頭を下げたりでおかしな光景だ。



けれど、おばさんがお母さんに渡した通帳の件には私も納得がいかず思わずこう言った。



「でも!おばさんが私の進学金を払う必要ないです!住まわせてもらっているのは私たちなのに。それに、こんな、加害者家族を、」



お母さんも頷いている。



するとおばさんは困ったように眉毛を下げた。



そしてしばらくしてこう話してくれた。



「それは…あの人と…旦那といつかどこか遠くに旅行に行こうって貯めた金やったんやけど、旦那はもう死んでしまったし。
1人で旅行に行く気にもならんし、この足やったらそもそも無理やし。
うちはあんたたちに使ってもらうのが一番よかと。

実はうちは子供ができん体でねえ。
本当は欲しくて欲しくて堪らんやったけど諦めるしかなかった。
でも今あんたたちがここにいて、なんだか子供と孫ができたみたいで嬉しかとよ。
絶対無理だと思ってたことが現実になって幸せなんよ。
まあ、子供と孫って思ってるならあんな態度取るなって言いたかろうけど…ふふ
やけん、遠慮せんで使って!
やりたかことばせんね!
子供が気なんて使わんでよか!」



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