(完)嘘で溢れた恋に涙する
朝食と夕食はいつも全員がそろってから食べるのが決まりだ。


特に夕食は毎日美結や他にも数名いる部活生が帰ってきて、お風呂を済ませてから始まる。


「美結、部活大変そうだね~」


向かいに座っている同じ学校の2年生の先輩が美結に話しかけてきた。


里奈さんという人で優しくて面倒見がよく、私と美結がここに入居してすぐの時はたくさん助けてもらった。


「新人戦が近いですもん。里奈さんもでしょ?」


「まあね~。新人戦前はどこも一緒ってことか」


里奈さんもバレー部に入っている。


「ですね~」


帰宅部の私が話に参加すことはできず、相槌を打ちながら無言でご飯を口に運ぶ。


「俺も今すっげえきついよ。どこの学校も一緒だな」


「泰斗さんは別格ですよ!だって全国レベルなんだから!」


話に参加してきたのは、隣の私立高校に通う2年生の泰斗さん。


柔道の推薦で遠い県外からここに来て部活に励む泰斗さんは全国で何度も入賞している実力者だ。


だけどそれを鼻にかけることはなく穏やかで、下宿生たちのリーダーのような存在だ。


3人がしみじみとそれぞれの部活について語っている間、私と私の隣に座る泰斗さんと同じ高校で3年生の美紅さんと、私の斜め向かいに座る同級生の倫太郎くん、それから透は黙々と箸を動かしていた。


クールで無口な美紅さんと、人見知りがひどいらしく、話を振られない限り会話に参加できないという倫太郎くんがしゃべらないのはいつものことだが、透が静かなのは珍しい。


食事の時は誰よりも騒がしいくらいに喋るのに。


不思議に思って透のほうを見たら、タイミングよく目が合ってしまってすぐにそらした。


無駄な誤解をされたら困る。こっちに一ミリたりともそんな気持ちがなくても自分に都合よく解釈する男なのだ、奴は。


しかし、透は私に絡むことはせず、3人の話に割って入った。


「えーみんな大変そうっすね。サッカー部は全然いつもと変わらずきつくないっすよ」


「っていうかあんた幽霊部員みたいなもんやろ。話に入ってこんで」


へらへらと笑う透を勢いよく切り捨てにかかったのは美結だ。



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