(完)嘘で溢れた恋に涙する
「ねえ、陸玖、不本意ながら死んでしまった人も、自分の本意で死んでしまった人も、残していく大切な人に願うのは同じことだと思う。

もう死ぬ運命から逃れられないって悟った時、願うのは残していく人たちに復讐をしてもらうことなんかやない、その人たちの幸せだけなんやないかな。

辛くて、目の前の事実から逃げたくて、自分もそこに行ってしまいたくて、だけどそれはできんくて、胸の中に復讐の炎を燃やすことしかできんくて。

あんたの気持ちは痛いほどわかる。

でも誰もそんなの望んでない。

亡くなったあんたの家族が望むのは、あんたがこれからの人生を幸せに生きることだとうちは思う。

自分の幸せのために、自分に正直に生きなよ」



その痛いほどに胸に突き刺さる同族の言葉は俺のあの記憶を呼び起こした。



『お兄ちゃんは幸せに生きて』





俺の手を掴む小さな手。


傷だらけの顔。


消毒の匂い。


涙を目の淵に溜め込んだ最後の笑顔。






ああ、嫌な記憶だ。




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