(完)嘘で溢れた恋に涙する
目の前にはリレーを走り終えたままこっちに走ってきたと思われる陸玖が立っていた。



「り…く」



そう呟いた瞬間、理玖が腕を引き寄せて強く抱きしめてくれた。



「やっぱあれ由姫の声だったんだな!」



ニコニコと笑いながらそう話す理玖が眩しくて、少しだけ目が潤んでしまった。



慌てて唇を噛み締め、泣かないようにする。



「き…こえたの?走ってたのに」



ガサガサで出しにくい声を必死に出してそう問いかけた。



「当たり前だろ。どこにいても由姫のことなんかわかるよ。てか疲れたーー。俺走り終わってそのままここまで走ってきたんだぜ?介抱してよ」



平然とそう言ってのける理玖の姿に思わず笑ってしまう。



「お疲れ様」


そう言って、ジャージの袖で陸玖のこめかみの辺りに垂れる汗を拭うと、また太陽みたいな笑顔で笑ってくれた。



「おう!」







きっと私は何を失っても理玖だけがいてくれたらそれだけで生きていける。なんだって耐えられる。




< 87 / 381 >

この作品をシェア

pagetop