(完)嘘で溢れた恋に涙する
夕日の半分が地平線の下に隠れ、淡い紫や赤の混じり合った空を眺めていた。




すると後ろから軽快な靴の鳴る音が聞こえた。



「由姫!」




振り向くとそこにはサッカーボールを抱えた理玖がいた。




「お母さん先行ってるね」



そう言ってお母さんは急ぎ足でその場を離れて行った。




家でおばさんが待ってるから仕方がない。




本当なら私も早く帰って手伝わなきゃいけないのに、お母さんの送ってきた視線は大丈夫だからと言っていた。




今日はお母さんに甘えよう。




明日からまたたくさん手伝えばいい。




「遊んでたの?」




「おう。サッカーしてた。由姫は病院の帰り?」



「そう」




理玖が駆け足で私の隣に並んだのを確認してまた歩き出した。




「まだちょっと掠れてるな」




「ああ声?そうだね。しばらくしたら治るって言われた」




「お母さん喜んでたろ?」




「すごかったんだから。もう号泣してなだめるの大変だったー」




「そんだけ心配してくれてたってことだろ」




「…うん」




こうやって普通に話していると、今までどんな風にコミュニケーションを取っていたのかわからなくなる。




首を縦か横に振ることしかできない私によくみんな付き合ってくれたなって。




より一層みんなの優しさを感じた。




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