透明人間の色
『晶人さん、今どこ?』
胸をつく声。
俺はその声だけで全てを放り出して帰りたい気分になる。
その瞬間、彼女以外全てがどうでもよいのだと信じられる。
それだけ俺を支配してる愛しの人。
なんて、そう思ってる自分は少し気持ち悪い。全くらしくないから。でも、なんだかんだ言っても、ふわふわしたこの気持ちは心地いいものだ。
しかし、それでも俺はあの人だけは裏切れない。
「ごめん、美香ちゃん、今仕事」
拾ってくれたあの人だけは。
『じゃあ、塾に行く』
そのまま電話を切ってしまいそうな勢いでそう言った美香に、慌てて咄嗟に嘘をつくこともできずに、
「家で待ってて」
と、言ってしまった。
『晶人さん………?』
不信感たっぷりにそう言う彼女に、出来る限りの優しい声を出す。
「待ってて、欲しいんだ」