透明人間の色
気が変になるくらい静かな部屋だと思った。
そのくせ、チクタクと遅すぎる時を刻む時計ばかりが自己主張する。
やりかけの宿題、読みかけの本、つけっぱなしのテレビ。
何をしていても、聞こえるのはノロイ時計の音だけ。
ペンを走らせる音も、主人公の台詞も、バカ笑いする芸能人の声も全て、この時計には負けてしまう。
私は仕方がなく家を出た。
家を出たと言っても、出てすぐの玄関の軒先に座り込んでみただけ。
でも、あの気が滅入るような音が聞こえないだけマシだろう。
外は気にならない音で溢れていて、家よりは心地いい。
でも、蝉の声が四方八方から聞こえてくるけど、その何匹が木から落ちれば晶人さんは帰ってくるんだろう?
虫は得意じゃないから、数えようなんて思わないけど。
そう思って、やはり私は偽善者なんだと実感した。
きっと、本当にいい人は蝉が落ちるたびに泣くんだ。
代わりに私は当てつけのように足に上ってきて払いのけた蟻の数を数えて、空を通り過ぎた飛行機の数を数えた。
でも、どんなものを数えていても、車の音に慌てて飛び上がった回数よりも大きい数がなかったことに気づいてしまって、笑ってしまう。
ダメだ。
今はどこにいたって、気が滅入るんだろう。
だから堂々と大声で笑ってみた。
気が滅入るような笑いだ。
私にお似合いの笑い方だと思う。