熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
会話が終わると、スティーブさんがクルリと身体の向きを変えた。
身を竦めていた私と真正面から向かい合う格好になり、私は反射的にシャキッと背筋を伸ばす。


「アヤノも、すまない。マリーのことをよろしく」

「あ、はい。あの本当に……」

「君の責任ではない。マリーの不注意にも原因がある。気にするな」


もう一度繰り返した謝罪の途中で、スティーブさんは私を遮ると、私の横を通り過ぎた。
慌てて振り返った時には、医務室のドアに手をかけていて、結局私がちゃんと謝罪し終える前に出て行ってしまった。


スティーブさんの背を見送った後、医務室には沈黙が流れた。
マリーさんの手当てを終えたドクターも、診察台から離れて奥のデスクに向かって行った。


「……とりあえず、週明けまでの宿、取らないといけないか」


ドクターの白衣の背中を見送りながら、優月が大きな溜め息をついた。


「今日までのホテルはチェックアウト済みだろ? あまり動かすなって言うし、このホテルで空きを確認するのが一番だな。……綾乃」


マリーさんに確認していた優月が、私に視線を向ける。
名前を呼ばれた時には、部屋の手配を任されることは予測していたから、私も足を揃えて姿勢を正した。
< 158 / 255 >

この作品をシェア

pagetop