熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
私の前では、マリーさんがどこか呆れたように眉間に皺を刻んでいる。


「ちょっ、綾乃、待て! お前、何言い出すんだ」


焦った様子の優月が、そう言いながらふたたび私の肩を手で引いた。
それにつられて、私は彼を肩越しに見上げる。


「私のせいだもの。当たり前のことでしょ」

「ウチなら使用人に任せられるから連れてきたんだ。何も綾乃がそんなことする必要は……」

「やるったらやるの! 私がしたことの責任くらい、私がとる!!」


優月にしっかりと身体の正面を向けて、私はそう怒鳴った。
私の勢いにのまれたように、彼がグッと言葉に詰まる。


「優月も言ったじゃない。せいぜいほんのニ、三日よ。必要なのは移動する時の手助けでしょ? 私じゃ抱えられないけど、なんとかなる」

「バカか。お前がやったらほとんど介護じゃねーか。人の世話なんかしたこともないくせに……」

「優月がやるより、マシ!」


私はこれ以上の反論を許さない意気込みで、目に力を込めて優月を睨み続ける。


「……はあ」


睨み合いを続ける私と優月に痺れを切らしたのか、マリーさんが太い溜め息をついた。


「じゃあ、勝手にしたら?」


続けて、そう言いのける。
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