熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
こっちに背を向けたまま素っ気なく続ける優月に、私はもう一度小さな声で謝りながら、羽織っただけのカーディガンに袖を通そうとした。
けれど、なんとなくその手を止めてしまう。


一度視線を自分の足の爪先に落としてから、そっと目線を上げて優月の背中を見つめた。
ただそれだけで、胸がドキドキと加速し始める。


頭の中で、マリーさんの裸同然の姿と、さっきの意地悪な爆弾がグルグルと蠢き始めた。
進藤さんに『嫉妬』と言われたあの荒れ狂った醜い感情が、私の胸にせり上がってくる。


「そうだ」


その時優月が、私に背を向けたまま呟いた。


「綾乃、今夜……」


何か言いかけた優月に、私は手を伸ばす。


「っ……?」


彼が小さく息をのんだ気配が、背中から振動で伝わってくる。


「優月、ごめんなさい」


私は優月の背中に抱きついて、身体の前に腕を回しながらそう言った。
私の腕の中でその身体がわずかに強張り、ゴクッと喉を鳴らす音が聞こえてくる。


「……謝んなくていいから、ちゃんと着ろって。俺のシャツにまで水染みてくる。冷たい」


優月はそう言いながら、お腹に回して組み合わせた私の手に手を重ねてきた。
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