熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
その一歩後ろを歩きながら、私は上目遣いにそっと彼を見遣った。


いつもはすっきりと整えられているサラッとした焦げ茶色の髪が、今日は海外出張帰りでちょっと無造作だ。
それでも気品が漂っているのは、彼の整った綺麗な顔立ちのせいもある。


スッキリした切れ長の目元。
色素薄めの茶色い瞳が、とても涼しげな印象を与える。


形のいい鼻に、少し小さめの薄い唇。
それぞれ極上のパーツが、小顔の中で絶妙なバランスで配置されている。


一見中性的な美しい顔立ちだけど、無駄な肉のない引き締まった身体つきは男っぽい。
スラッとした長身で姿勢がいいから、いつもとても堂々としていて、彼の魅力を際立たせている。


部下たちの目が離れたせいか、今、彼は大きな欠伸を憚らない。
口元を手で隠していても、普通なら大人の男性としてもだらしないはずの仕草。
それすら優雅に感じるのは、生まれながらの彼の血筋のせいだとも思う。


自らエレベーターのボタンを押した彼は、ゆっくりと私を振り返った。
視線を感じて、私はわずかに身体を強張らせる。


「綾乃もお疲れ様。海外出張、疲れただろ?」


自然に向けられる労いに、私は黙って頭を下げた。
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