熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「っ、綾乃っ……」


優月が私の前にしゃがみ込む。


「すまなかった。大丈夫か? 綾乃」


優月はそう言いながら、乱れた呼吸を整えようとする私の顔を覗き込んだ。


「だ、いじょ、ぶ……」


カラカラに渇いた喉に声が引っかかって、返事は途切れ途切れになる。
乱れているのは呼吸だけじゃない。
呼吸に追いつこうとした心臓も、フル稼働していた。
私はすぐには立ち上がれず、ぎゅっと胸元を握り締めた。


はーっと一度大きな息を吐いてみると、通りの真ん中で座り込む私と優月を遠巻きに追い越して行く人々の足音が、やけに近く大きく聞こえた。


すっかりオフィスアワーは過ぎたとは言え、広い通りは、私たちと同じ飲み会帰りのサラリーマンやOLの姿で溢れ返っている。
チラチラと向けられる視線に気付き、私は慌てて立ち上がろうとした。


けれどその前に優月の手が伸びてきて、反射的にビクッと肩を竦めてしまう。
彼は大きな手の平で、私の唇をいきなりグイッと強く拭った。


「ん、んぐっ……?」


一瞬、何をされているのかと思った。
続けて二度されて、優月が私の唇をゴシゴシ擦ってることがわかった。
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