月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
「なにもなかったら俺たちはいらないよ」
このご時世に、陰陽師なんてものは。
陰陽師が隆盛を誇っていたのは平安時代。
それこそ、安倍晴明様の時代だ。
「そうじゃなくて。黒藤が跡継ぎなるのを蹴ってるの、白桜を嫁にするって言い張ってるからでしょ?」
「―――」
がくん、と膝が折れて、俺は椅子に座り込んだ。
組んだ手に額を載せる。
「んっとにあのバカは……俺は男だって言ってるのに……」
「白桜が女の子だって知ってるの、ほんと少ないからねー。黒藤が男好きって思われるだけならいいけど」
「さらっと言うんじゃない、百合姫」
……俺が本当は女であるというのは、一族内部でも一部しか知らない。