月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
先代当主であり黒の母君である紅緒(くれお)様は、わけあって十六年前に眠りにつかれた。
当時黒は一歳。さすがに跡目にはなれない。
そのため、紅緒様の補佐役であった本家筋の青年が当主に就かれて、今に至っている。
黒の立ち位置は、『正統後継者』。
小路の内部で認められれば、すぐにでも襲名するところだ。
だがこの問題児、十三歳の頃に襲名の話が持ちだされたらしいが、一向に首を縦に振らない。
なんか色々理由を連ねているようだが……高校二年生になる今に至っても拒み続けている。
一方、俺と百合姫は一つ年下の高校一年生。
俺は御門(みかど)流宗家、月御門家の当主を務めている。
先代である祖父・月御門白里(しろさと)じい様がさっさと引退したいからという理由で、中等部に入るのを機に、十三になる年に襲名した。
「なんかありそうね?」