月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
「そうか? 華取も桃子も、そう珍しい名前ではないだろう?」
「うーんと、確か……千葉県にある香取神宮とかの『香取』なら結構見るけど、この『華』の『華取』って珍しくない?」
はなの華取?
言われて、俺も視線を帳面に落とす。
全然珍しいなどと思っていなかったが、確かに苗字としては聞いたことは――……ある、な。
どこだ? 百合姫のように、この名前に違和感を覚えなかった理由があるはずだ。
立ち上がると、百合姫が顔をあげてきた。
「白桜?」
「書庫を漁ってくる。明日も学校だから、百合姫はもう寝てな」
「書庫? 探しもの?」
「ああ。ちょっと、家系図を、な」