月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
無炎は月御門姓を名乗っているから、影小路姓である黒とは……まあ、遠い親戚、程度なら通るかな。
「白桜、黒藤が戻ってくるって知らなかったの?」
百合姫はまだスマホをいじりながら訊いてくる。
……たぶん俺たちの世代にしては珍しいかもしれないが、携帯通信機器を先月初めて手に入れたばかりで、それ以来ハマっている。
きっけは、高校へ入学したから、ということだ。
俺は他に通信手段があるから必要ないと言ったんだが、百合姫に押されて同じものを購入した。
「あいつはいつもいきなり現れる」
「ふーん。あの感じじゃ、襲名したのではないみたいね?」
「黒が継いだって話は聞いてないな」
黒は、陰陽道・小路(こうじ)流宗家、影小路本家の唯一の子どもだ。