樫の木の恋(中)



「は、半兵衛!人がおるんじゃから、そういうのは、や、止めてくれ…。」

顔を赤くしながら、こちらを向く秀吉殿。思いの外顔が近かったのに驚いたのか、咄嗟に顔を背ける。

「そういうのとは?」

「じゃからっ!抱き締めたり…耳に息…当てたり…。」

「秀吉は耳、弱いからのぉ。」

大殿が口を挟むと、官兵衛がまた再び笑う。
また大殿はそれがしに対抗心を剥き出しにしてくる。

「弱いのは耳だけではありませんもんね?」

「は、半兵衛!」

「ふふっ。言いませんよ。それがししか知らない事なのですから。そう易々と秀吉殿の可愛らしい姿を明かしたりなどしませんよ。」

大殿がむっとするのが分かった。
大殿の妾の時は、秀吉殿と大殿は最後までしていない。
故に大殿は秀吉殿の全てを知らない。

そこだけは大殿より有利に立っていて、優越感に浸れる部分だった。

「もー火花飛びまくりですなっ!このそれがしの疎外感!」

腹を抱え大笑いする官兵衛。
確かに官兵衛だけ関係なく、部外者だ。

「まぁ半兵衛も織田殿も秀吉殿が愛しいのは分かりますが、ここはまぁ仲良く飲みましょうよ。ほら、半兵衛も後生大事に秀吉殿を抱かない!」

「そーだそーだ!」

秀吉殿が腕の中で、官兵衛に同調している。仕方がないので名残惜しく秀吉殿を離す。

そして再び四人で酒を飲み始めた。


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