樫の木の恋(中)
きゅう




官兵衛の大殿との謁見を無事に済ませ、長浜に帰ってきてから三ヶ月。
大殿は上杉謙信を倒すために、伊達家などと手を組み、打倒上杉を画策していた。

そんなころに大殿から書状が来ていた。

それは上杉の軍が畠山家が治めている七尾城を攻めていると。
織田家としても上杉家のこれ以上の領土拡大は避けたいところ。七尾城は堅城故に、まだ落とされてはいないが、織田家から援軍を出してこれを助けるのだと言う。

この書状に秀吉殿は渋い顔をしていた。

「上杉家とはいつかぶつかるのだろうなとは思っていたが…。」

「何か心配事でも?」

「ああ。…まぁな。」

しかし秀吉殿はそれ以上は言ってくれなかった。

最近の秀吉殿はなんでも相談してくれていた。
しかし今はなにも言わない。きっと秀吉殿の中でも心配事をまだ具体的に言い表せないのだろう。

話してくれるまで待つと決め、軍の準備をするため部屋を後にした。


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