樫の木の恋(中)





足利義昭を追放する以前、織田家と同盟を結んでいる徳川家に武田家が侵攻した事により、織田家と武田家の親交は破滅していた。

それから足利義昭と対立した織田家を武田家が筆頭となり反織田包囲網を張ったのだ。しかしすぐに武田信玄が亡くなり武田家はその事をしばらく隠しながらも、西上を諦めた。

武田家と織田家の関係は最悪と言っても過言ではなかった。



そんな中、武田家との大きな戦いが始まろうとしていた。




武田家から奥平貞昌が徳川家に寝返り、長篠城を守護していた。長篠城は武田家の領地に程近く、当主となった武田勝頼が攻めに来ていた。

「強右衛門!強右衛門はおるか!」

貞昌は、一万と少し程いる武田勝頼が率いる兵に攻められ鉄砲で抵抗するも兵糧蔵が焼かれ食べ物が無くなり、落城寸前だった。

この事態を家康殿にお伝えしなければ、そう思っていた。

奥平家は、元々徳川家についていた。しかし貞昌の父の代に武田家へと寝返ったのだ。
それなのに、家康殿は再度徳川家へつきたいと申し入れると、快く受け入れてくれた。

そんな家康殿のためにもここは落城させる訳にはいかなかった。

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