樫の木の恋(中)
「秀吉殿、少しは抵抗してくださいよ。妬いてしまいます。」
素直にそう言うと秀吉殿はため息をつきながら笑った。
「こう何度も抱き締められてると、なんだか抵抗するのも疲れるんじゃよなぁ。かといって、半兵衛に抱き締められる時と違って、胸がときめくわけでもないし。」
秀吉殿の言葉に少し嬉しくなってしまった。しかしそんなこといわれたところで明智殿が抱き締めるのは許せない。
「酷い奴じゃのぉ秀吉は。遠回しに余の事をどうでもいいと言っているではないか。」
「ええ、そうとってもらって構いません。」
「相変わらずつれないな。」
明智殿の腕を懸命に離そうとするが、全然離れない。その間にも明智殿が秀吉殿の香りを嗅いでいる。
「今度戦が終わったら、城に遊びに来んか?京に行く時途中にあるんじゃから来やすいじゃろう。」
京での政務も秀吉殿と明智殿は共に任されている。きっとそれがしがお供出来なかった時に二人で会うこともあるだろう。不安ばかり募っていく。
「お断りします。」
「ほう、柴田殿の話…とかしたかったんだがなぁ。」
「……ここでは駄目なのです?」
「駄目じゃな。」
秀吉殿はわざとらしくため息をつく。
本当は分かっているのだ。別にここで話せる話なのだろうが、明智殿は己を呼びたいが為に駄目だと言っていることを。
しかしどのような情報でも知っておきたい。
おそらくここでは話す気がないのなら行くしかないなと考えているはず。