恋蛍2
「うわあ……真っ赤になりよる。これは冷やさないとダメさ。痛くないか?」


ふたりの片方ずつの無防備な足の裏は、火傷とまではいかないけど、火照って真っ赤になっとった。
これはすぐ冷やしてやらんと、皮がむけて痛くなってしまいそうだ。


「兄ィニィ……ごめんなさい」


突然、翔琉がわあっと声を上げて泣き出した。
オレはぽろぽろと流れる大粒の翔琉の涙をTシャツの裾でぐいっと拭う。でも、涙腺やら感情が大爆発中の翔琉の涙はポロポロ、ポロポロとあふれて止まらない。


「泣くなよー。サンダル、どうした? 波に流されてしまったか?」


聞いても、翔琉は泣くばかりだ。


「もおー、泣いても話してくれんと、兄ィニィ分からんよ」


泣かんでもなんくるないからさぁ、と翔琉の頭をわしゃわしゃ撫でてなだめていると、芽衣ちゃんがオレのTシャツの裾をくいっと引っ張った。

「結弦ニィニィ、違うんだしさぁ……」


「えっ?」


「翔琉はサンダル、なくしてなんかいないよ。流されよったんでもないよ」


そして、目をウサギみたいに真っ赤に潤ませて、一度は下唇を噛み、でも意を決したように震える声で言った。


虎太郎(こたろう)たちが、神さんの木の上に翔琉のサンダル隠したのさぁ」


「どういうことね?」


虎太郎くんたちはいつも翔琉をからかってくる、やんちゃな男の子3人組だ。
虎太郎くん、(たすく)くん、(げん)くん、だ。


「わたしと翔琉が浜で遊んでいたらさ」


虎太郎くんたちも後からやってきて、合流したらしい。


「はじめはさ、5人で仲良く遊んでいたんだよ。けどさ……」


翔琉は佑くんから浅瀬に誘われ、浜にサンダルをぬいで、波打ち際で遊んでいたそうだ。


「そのとき、源が翔琉のサンダル持って行きよって、虎太郎が神さんの木に登って隠したの」





『見ろー! 神さんの木が翔琉のサンダル盗みよーる! 大変さー』


『誰か取って来てやれよー! 弱虫の翔琉に木登りなんかできるかー?』


『おれはイヤだよー? あ、そうさ! また自慢の結弦兄ィニィに頼んだらどうだね』


『あーそれがいいね! 翔琉は結弦兄ィニィがおらんとなーんもできん! 泣き虫だからねー』


『お前、ほんとうに海斗先生のムスコね? 弱虫ケムシー』

< 42 / 46 >

この作品をシェア

pagetop