御曹司を探してみたら
16.決断の日

先方からコンペの結果が通知される当日、私は朝からそわそわと落ち着かなかった。

「ねえねえ、井上くん。コンペの結果っていつ頃教えてもらえるのかな?」

「少しは落ち着いたらどうですか?今更焦ったところで結果は変わりませんよ」

井上くんに聞いてみても彼はこの手の事柄に慣れっこなのか、そっけなく浮き足だつ私を諭すだけである。

私は仕方なく何度目かになるか分からない、コーヒーのお代わりをマグカップの中に注ぐべく給湯室へと向かったのだった。

会社に来てからまだ一時間も経っていないのに、図面の印刷を3回もミスして印刷用紙を無駄にしたり、書き直した図面を上書き保存せずに消去したりと踏んだり蹴ったりである。

だって、こんな大きな仕事を任されるなんて初めてなんだもん。

こういう日に限って、朝から田辺さんは不在である。

デスクの上にビジネスバッグとブリーフケースが置いてあるということは会社内にいるということだけど、誰もどこに行ったのかは聞いていないらしい。

何のためのリーダーなんだか……。

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