御曹司を探してみたら

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監視役は振り切ったが念には念を入れて、一旦駅で二手に分かれそれぞれ時間をずらしタクシーで武久のマンションに向かうことになった。

そういや、武久が私の家に来るのは慣れっこだけれど、私が武久の家に行くなんて今までなかったなあ。

……なんて呑気に考えていられたのは、やつの住まいを見るまでのことだった。

「うっそ……」

指定された場所でタクシーを降りると目の前には、どでかいタワーマンションがそびえたっていた。

なんどもマンション名を確認したが、武久から送ってもらった住所に記載されていたものと間違いなく一致している。

あれか?

じゃあ、この23階っていうのも打ち間違いじゃないの!?

都心の一等地にそびえたつタワーマンション。いくら一部上場の周防建設の社員でも簡単には住めない代物である。

(武久って……正真正銘、周防の御曹司サマだったのね……)

ここにきてようやく実感が湧いてきて、そら恐ろしくなってくる。

……何も知らなかった頃にはもう戻れないのだろう。

でも、怖気づいていてもしょうがない。

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