ばいばい、津崎。


坂道を勢いよく下ると、とても涼しい風が吹いた。

私の髪の毛は揺れるのに、短髪で毛質が硬い津崎の髪の毛はあまり揺れない。

気づかれないようにおでこをそっと背中につけた。

津崎はプルメリアよりもいい匂いがして、私の瞳から流れた涙が風でダイヤモンドのようになびいた。



ねえ、津崎。

私は新しいことをはじめることに臆病になってしまった。


満員電車は嫌いだし、仕事だって私がいなくても成り立つ。そんな淡々とした毎日を私は未来で生きてる。


そこにきみはいないけど、もしいたら……。

これから見つければ、と26歳の私にも言ってくれる?


そしたら私、なんでもやれそうな気がする。

だから一緒に大人になろうよ。


なってよ、津崎。

< 98 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop