朝はココアを、夜にはミルクティーを
15 明日はきっと


「まさかブラマが偽装表示とは……ねえ」


従業員一同、休憩室のテレビに釘付けだった。
東京の本社の取締役と、問題のあった私たちの住む地域の総括本部長、それからその他きっとみんな役職のある人たち総勢七、八人はいるだろうか。

全員が揃って頭を下げている。

パシャパシャと音を立ててフラッシュがたかれ、テレビ画面が点滅するみたいにチカチカした。


大型ショッピングモールを経営するブラックマーケットカンパニーは、商品の偽装表示を認めて公表した。その会見の一部始終を情報番組で放送しており、コメンテーターがなにやら神妙な面持ちで話をしている。

新聞でも一面に取り上げられ、一時的なものかもしれないがブラマに大打撃を与えるのは目に見えていた。


「これでコマチにお客様が流れてくるんじゃないか?」

「明日から一気に忙しくなったりして!」


ワイワイ盛り上がるみんなをよそに、亘理さんだけはあまり喜ばしい顔をしていなかった。
それが気になってしまって、テレビに集中できない。

全国各地に店舗を構えるブラマにとって、これがどのような影響をもたらすのか。
多くのライバル店がある市内とは違い、私の働くコマチは住宅地に存在する数少ないスーパーである。このあたりに住む人たちは、きっとブラマかコマチを利用している確率が高い。

みんなが言う通り、今回の件でブラマからコマチに変える人は間違いなくいるだろう。
私がお客様の立場だったら、コマチを選ぶと思う。
品揃えはブラマよりは劣るけれど、それでも正しい商品表示をして品質も保証されているお店の方がいいに決まっている。

< 143 / 162 >

この作品をシェア

pagetop