朝はココアを、夜にはミルクティーを


それから彼女は、社内でこう呼ばれるようになりました。


『あの美男美女の小池くんと山越さんに、割って入ろうとした邪魔なやつ』
『可愛がってくれている山越さんの気持ちを踏みにじり、小池くんに擦り寄ったやつ』
『身の程知らずのやつ』
『ニ人の間を引き裂こうとしたやつ』
『とにかく邪魔なやつ』

邪魔なやつ、邪魔なやつ……。


計算高い山越さんによって彼女は会社内での立場を悪くしてしまい、せっかく正社員として働いていた会社を辞めざるを得なくなってしまったのです。

もちろん真実を知る同僚も何人かいましたが、そんな少人数ではどうすることも出来ません。

彼女はレッテルを貼られたまま、とうとう仕事を辞めてしまいました。





━━━━━それから三年。


彼女は引っ越し、今は中心都市から少し離れたところに移り住み、とあるスーパーマーケットの契約社員として毎日せっせと働いています。

契約が切れたらそこで終了になるかもしれないという恐怖と戦いながらも、真面目に、そして元気に明るく、三年前のことはなるべく考えないようにしながら、前向きに生きています。


二十七歳、独身、恋人なし。
中心都市から離れているために安い家賃でまあまあの広さがある1LDKに暮らしており、小回りのきく軽自動車を持ち、毎月少しずつ貯金をし、そこそこの生活をしながら、そこそこに生きているのです。

彼女は、そこそこに……。


< 2 / 162 >

この作品をシェア

pagetop