朝はココアを、夜にはミルクティーを


その後、亘理さんは私用のものを購入したいとフラッといなくなり、五分後に大きな抱き枕を抱えて私の元に戻ってきた。
水色の抱き枕を持ってレジに並ぶ彼を遠目から見たら、面白くて吹き出してしまった。


「ちょうど良かったです、買わなくちゃと思っていたので」

亘理さんが、車の後ろに荷物をどんどん積んでいく。
最初に寄った百円ショップで買ったものの上に、積み重ねるみたいに今さっき購入したものを入れる。
例の抱き枕は後部座席に落ち着いていた。

「万が一、また白石さんを布団に連れ込むようなことがあったら、どうか引っぱたいてください。お願いします」

「分かりました、手加減なしで行かせていただきます」

「…………ほどほどにお願いします」

視線を落として怯える彼に、私はにっこりと微笑む。それが余計に恐怖心を煽ったようで、暗がりなのに青ざめて見えた。


買い物を無事に終えた私たちは、もう時間も遅いからということでラーメン屋に寄って、美味しい味噌ラーメンを堪能してから帰宅した。

彼は店長であり上司であり同居人でもあるけど他人。
それなのに、気がついたらあまり気を遣わなくなってしまった。

亘理さんという人間はとても不思議な空気を纏っている人で、その場に溶け込むのがうまいと思う。協調性があるというよりも、自然にそこにいる感じ。
誰かに流されたりしないで自分の意見もきちんとあって、それを発言することもできる。

控えめながらも、自分より年上の社員さんにもちゃんと話ができるのが強みなんじゃないかなと思う。


「ラーメン、美味しかったですね」

久しぶりに食べました、と笑う彼の笑顔も、前よりもっと柔らかくなった気がする。
寝る前のミルクティーは、亘理さんとのお休み前の短い会話の時間だ。

< 51 / 162 >

この作品をシェア

pagetop