朝はココアを、夜にはミルクティーを


彼と先生のやりとりを見ていると、茶髪のママさんが「あの人が店長さん?」と私に問いかける。

「はい、そうです」

「若くても店長になれるのねぇ」

「まあ……そうですね」

適当にうなずいていたら、そうだった、と彼女は忘れていたみたいにこちらを向き直した。

「お姉さん、もし良かったらうちの旦那の同僚の人と会いません?誰か紹介してってしつこいんですよー」

「…………えぇっ!?」

「やだー、やめなよ初対面で。お姉さん驚いてるよ?」

まさかこんな料理教室で初めて会った人に、出会いの場を打診されるとは思わなかった。
唖然としていると、フォローするみたいに他のママさんたちが彼女を止めている。

「だってもう友達はほぼみんな結婚しちゃってるしさー。お姉さん可愛いし、どうかなーって」

「お姉さん困ってるじゃん。ねぇ?すみません、断っていいですからね!」

求められた同意に、力なく曖昧にうなずいておいた。
あまり強く拒否するとそれはそれで嫌な印象を植えつけかねない。

困ったなぁ、どうしよう〜、というママさんのつぶやきに反応を返せないでいると、やけにハッキリした声で

「白石さん」

と亘理さんに呼ばれて反射的に顔を上げた。

「は、はい!」


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