嘘の朝

じゃあなんでこの高校へ進学したか
家から近いから
元々進学する気もなかったから

適当な理由を挙げるならばきっとこう


マンションの三階
2人で帰宅したこの家は
母の給料と母子家庭が市から貰える
お金と私の少しのバイト代で
借りてる部屋だ

「今日何?」
「あ〜と、肉じゃが」

サランラップにかけられた
2人分の食器類と大皿に肉じゃが
いつもの様に小さなメモ書きには
“温めて食べてね” と母の字で

「拓海ご飯は?」
「多め」

拓海はよく食べる
拓海はよく動く
拓海は頭もいい
拓海は気配りもできる

拓海は…拓海は…


「姉貴?」
「…え」

あれ私ボーとしてたわ

「箸」
「あぁ、ありがとう」

テレビを点けながら食事をした
母の肉じゃがの肉はやはり少なかった
でもじゃがいもは大きめで
肉の存在なんてどうでも良かった

夜11:40分
睡眠を取ってバイトへ行く
朝の7時まで遅番でそのまま学校に行く
昼間より給料がいい

「さみっ…」

__カチッ

煙草に火をつけながら
家からも学校からもさほど遠くない
コンビニへ向かう

右側のコンビニは嫌だ
だからこっちの左側の店舗にした
右は学校隣で色々面倒だから

「ちっす」
「あ、ちーーす」

同じ学校の2年も同じ時間帯で働いてる



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