記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!





「何か手伝うことはある?」


 グラスに口をつけながら言うと、卓馬は雪乃好みのカリカリに焼いたベーコンとスクランブルエッグ、ベビーリーフの盛り付けられた皿を差し出した。


「いや、出来上がったから大丈夫だ。ありがとう。こっちで食べよう」


 卓馬自身は、自分の分の皿とコーヒー、パンの盛られたカゴを手にした。先に歩き出した彼が向かったのは、テレビ前のソファー。

 そのソファーの真ん中を倒してテーブルを出すと、パンのカゴとコーヒーを乗せてから腰掛けた。

 つづいて雪乃も反対側に座り、卓馬のコーヒーの隣にオレンジジュースを置いて、胡座をかいて座った。
 

「何か興味深いニュースやってる?」


 パンを一つ取ってちぎりながら問いかけると、卓馬はいくつかチャンネルを変えた。

 とりあえずで止めたニュースでは、可愛らしい女性アナウンサーが今はいっているニュースのラインナップを紹介している。


「あー、今あるのは芸能人の不倫問題と離婚の話と……野菜の高騰のニュースくらいだな」


「……つまり、ないってことね」


 テレビの音だけがする沈黙の中、フォークが皿を擦る音だけが嫌に大きく聞こえるが居心地が悪いってことはない。卓馬の隣は居心地がいい。




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