梟に捧げる愛


 白いテーブルには、白いティーカップ。中には熱い紅茶が注がれており、白い皿にはお菓子やサンドイッチが乗っていた。美味しそうだが、チヴェッタは食べる気になれない。
 宮廷魔法使いになってはいても、本質は労働者。近衛騎士や侍女達が見ている中での食事には、抵抗がある。

「こうして話すのは、はじめてだな。半年も王宮にいたのに、今更とは笑ってしまう」

 チャールズは笑った。年相応の笑顔に見えて、チヴェッタは少し、安心した。

「あの占い──いや、予言か。あれは本当に実現するのか?」

「はい。します」

 紅茶を飲もうとしたが、チヴェッタは中断してはっきりと答えた。本当は、肯定しないほうがいいのかもしれない。
 けれど、自信は今も消えていないのだ。

「そうか……。姉上達が言っていた。チヴェッタの占いは本当によく当たる、と。そのおかげで、一番上の姉上は良い縁談がまとまった。感謝する」

「いえ、仕事ですので」

 チヴェッタは紅茶を飲む。いい香り。それにとても、甘い。蜂蜜が入っているらしい。
 きっと、いい蜂蜜だ。

「さっき宰相に聞いたんだが、雇用期間を延長するらしいな。アイザックが喜ぶ」

「……どうしてそこで、アイザック・ヴェンデルの名前が出るんですか?」

 カップを置き、チヴェッタは小首を傾げてチャールズを見た。

「どうしてって……アイザックはそなたを気に入っているようだ。よく話題に出るし……本当なのか? あの年中無表情の男の感情を見抜けるというのは」

「は、はい……」

 チヴェッタは意味がわからなかった。話題に出る?
 もしかして、悪口とか?

「それはすごいな。魔法使いだからか? 私は知り合って二年になるが、一度も見抜けたことがない」

 チャールズは可笑しそうに笑っている。
 アイザックが剣術指南役になったのは、二年前だそうだ。以前の剣術指南役は引退し、田舎で悠々自適に暮らしている。
 次の剣術指南役は、多くの者が立候補し、また推薦もあった。国王は「王太子の気に入った者を選ぶといい」と言って、すべてをチャールズに一任したのだ。
 チャールズはいろんな騎士を隠れて見た。単純に強い者、形だけの中身のない者、中には魔法を使える騎士もいた。
 そんな中で、アイザックを選んだ。侯爵家の嫡男だと知ったのは、選んだ後だった。

「あの者の剣は真っ直ぐだ。ズルして勝とうとする者もいるが、アイザックは負けない。私はあの者の剣に、正義を見たのだ」

「なんとなく、わかります」

 アイザックが剣を抜いているところを、何度か見たことがある。うまく言えないけれど、チャールズの言う通り、真っ直ぐな剣だと思った。正しい人。正しいことを、正しいと信じて選び、決定することができる人。
 正義──そう、正義だ。チヴェッタには似つかわしくない言葉。なんだか、胸がムカムカした。

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