梟に捧げる愛
「そうか。同じ感想を持つ者がいると、やはり嬉しいな。……チヴェッタというのは、本名ではないと聞いた」

「はい。魔法名、です」

 チヴェッタのカップの中身が空になると、侍女が素早く、熱い紅茶を注いでくれた。居心地がいいとは言えない。目の前には王太子がいて、周囲には大勢の人間がいる。見張られているような気分だ。
 チヴェッタが何か粗相をすれば、厳しくも冷ややかな目を向けられそうで怖い。

「魔法名か……。本名を知りたいと言ったら、教えてくれるか?」

「できません。お許しください」

 チヴェッタは反射的に、即答してしまった。
 チラッと騎士や侍女を見たが、責めるような目では見られていなくて、安堵した。

「残念だな。アイザックに勝てると思ったのに」

「私の本名を知ることが、勝ったことになるんですか?」

「なるさ。アイザックよりも先に知れば、悔しがる。無表情が崩れるかもしれない」

 チャールズは楽しそうだ。悪戯を企む子どもみたい。
 いや、十二歳なのだ。子どもらしい面があって当然。

「そうだ。本題を忘れていた。もうすぐ、私の十三歳の誕生日を祝う舞踏会が開かれる。その時、占って欲しいのだ、相性を」

「相性ですか? どなたとでしょう?」

「その場にいる令嬢すべてとだ」

 少しだけ、チヴェッタは驚いた。意中の相手がいるのかも、と思ってしまったのだ。

「未来の王妃を決めるには早い気もするが、父上や母上は心配性だし、私自身、早めに決めて安心しておきたい。だから舞踏会の夜、隠れて占ってほしい。具体的には、将来子どもが──男子が生まれるのか、浪費癖がないのか、とかだな」

「……わかりました」

 チヴェッタは頷く。断る理由はない。
 それでも、目の前の少年が急に、冷めた人間に見えてしまった。
 さっきまでは、子どもらしく見えたのに。

「そんな目で見ないでくれ。私は王族だ。恋をするのは、諦めている。姉上達は違うようだが──違うな。姉上達も諦めているのだ。小説の中にあるような恋を諦め、夫になると決まった者に恋をする。笑える話だ。──だがそれは、アイザックとて同じこと」

 また、あの人の名前を出す。
 どうして? 私とあの人がまるで、特別な仲みたい。


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