人狼 セブンティーン
「んん……」
………あれ?何があったんだっけ?そう言えば……人…狼?って
「母さん!!」
気を失う前を思い出し、慌てて目を開けて起き上がる。
「あっ!起きた!」
まだ頭がボーッとしていて、視界がハッキリしなかったが、ただ一つすぐに分かったことは、赤金の前には憧れの縁堂がいるのと、100%自分の家じゃないという事。
「麻美っじゃなくて、縁堂さん?」
視界がハッキリしてきて見えたのは、木製の部屋に、沢山の人達。その人達の中には、知っている人の姿も見える。
「赤金くん、起きたのか」
「あっ。」
立とうとした赤金に声をかけたのは、白髪のイケメンリア充。白井 湊だ。
お昼の事を思い出し、赤金は少しイラっとして、白井を睨みつける。
「赤金くん?どうしたんだい」
完全に立ち上がった赤金は、白井を睨みつけるのを止め、周りを見渡す。
「赤金くん。みんな、急に倒れて起きたらここにいたらしいの」
「あ、うん。」
縁堂の声を何となく聞きながら、部屋を赤金は歩き回りながら散策する。
いくつか棚があって、棚には本が詰まっている。真ん中には、長机とモニター。それから1人掛けの椅子が、17個。モニターの画面は真っ黒で自分が反射され写っている。
おそらく、人狼の参加者であろう人達はそれぞれ座っていたり、赤金のように部屋を歩き回っていたりと、こんな状況でもそれぞれの個性が滲み出ている。
「あぁぁぁぁ!!!!!!!」
「!?」
急な幼い男の子の叫び声に、赤金や他の人も手を止め、周りを見渡す。
「ここだよここ!!モニタァ!」
その声に全員の視線がモニターに集まる。勿論、赤金もモニターを見た。
「もぉ〜君達始めんの遅すぎ!」
モニターには、小学生ぐらいの男の子が、白い部屋でジタバタと足をバタつかせている映像が映っていた。どうやら声の主はその男の子のようだ。
「はい!ケータイ取り出して!今から控え室に転送するよ!」
控え室?転送?それよりなぜ怒っているんだ?
色々な事を赤金は脳内で考える。
「なぜ怒っているかって?赤金くん。君らが遅いからだよ!」
「…!?」
まるで赤金の脳内を読んだかのような言い方に、赤金はスマホを取り出そうとした手を止め、モニターを凝視する。
「へへへへ。僕に逆らうのは絶対に無理だって事、分かったかな?」
どういう事だ?何故思ったことが分かった?
「どういう事……!」
女性の怒鳴り声が途中で途切れたと思った瞬間、景色がガラッと変わった。
「ここは?」
どうやら、さっきまでの場所とは違い狭い個室のようだ。おそらく、場所が一瞬にして変わった?
赤金はもう一度部屋を見渡す。他の人たちも消え、ベッドと机と椅子だけの個室だ。やはり変わっている。
『ピロリロリン!』
また散策を始めようとしていた赤金のスマホが鳴る。
何だろうと思い、赤金はスマホをポケットから取り出した。スマホを付けて、画面を見ると『あなたの役職は村人です』と表示されている。
「人狼スタート…か…」
『ピロリロリン!』
アニメの主人公のようなセリフを遮ったのは、自分のスマホだった。赤金は再び画面に目を落とす。
『夜です。自分の役職での行動を完了させてください。』
早くしないと……って、俺は村人か。心の中で自問自答する自分を赤金は、一瞬悲しいと思ってしまう。
『夜が明けます。会議場へ、転送します。』
自分に苦笑いしていた赤金を遮るように、ケータイに表示される。その文字を読み、赤金は楽しみな反面、少し怖かった。
「俺が最初の犠牲者だったらどうしよう」
ここでゲームオーバーは悲しい。しかし、たかがゲームだ。
赤金はスマホの画面を眺めながら、転送されるのを待つ。
何秒経ったのだろう。一瞬瞬きをした瞬間に、そこは会議場だった。立っていたはずなのに、椅子に座っていて、手に持っていたスマホもポケットの中だ。
ポケットからスマホを取り出そうとした赤金は、あることに気づく。
『みんなきているはずなのに、空席がある。』
確かに自分の斜め前の席が空席なのだ。他は全て誰かしらが座っている。
「赤金くんも気づいた?」
「ん?」
隣に座っていた縁堂が急に声をかけてくる。しかし、いつの間にか縁堂は、長く綺麗な髪を、後ろで縛ってポニーテールに変わっていた。確か、最後に見たときは、縛って無かったはず……
「空席だよ。空席」
「あぁ、気づいた。」
髪型を気にする赤金が気になったのか、急に縁堂がポニーテールを触りながら、こちらを優しい眼差しで、見つめる。
「あぁ。これ?いつもは結んでないんだけどね。気分かな」
「あぁ、」
『ピロリロリン!』
まただよ。俺は色々とこいつに遮られる。
縁堂との会話を、遮られイライラしながら、赤金はスマホを取り出し画面に目を落とす。
『銀貨(ぎんか) 輝(あきら)さんが死亡しました。』


「輝ぁ!!」
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