人狼 セブンティーン
0夜目
「うんいいよ」
クラスの人気者、白井(しらい) 湊(そう)が同じクラスの女の子と、メッセージアプリのアカウントを交換する。
その光景を眺めながら、赤金(あかがね) 真白(ましろ)は思う。
『人生の勝ち組、リア充が…』
白井を横目に赤金は、スマホの画面を眺める。そしてメッセージアプリの連絡先の欄を開き、何度も眺める。
「ハァ…」
何度見たって、そこに女の子の名前はない。
そりゃそうだ。
僕は『人生の負け組、非リア』なのだから。
「赤金くん?」
「まったく。これだからリア充は…」
頭上から聞こえる女の子の声に、妬み中の赤金は、気づく素振りもない。
「赤金くん!!」
「……っ!?」
声の主に揺さぶられ、やっと赤金は存在に気づいた。
「なっ!?なぁにぃっ!?」
慣れない女の子に赤金は、変な声を上げてしまう。そんな赤金を見て、女の子はクスクスと笑う。
「いや、いっつもボーッと何してるのかなって」
「…………」
しばらくぶりの女の子との会話で、口が動かず、ただ手だけが顔の目の前で空を切る。
「赤金くん?」
何も言わずに、手を目の前でブラブラさせている赤金を不審に思ったのか、女の子は赤金の顔を覗き込む。
「赤金く〜ん!」
「あっ!いやその〜えっと〜赤金、真白です」
「えっ?知ってるよ〜!同じクラスでしょ!」
えっそうなの?と心の中で赤金は質問する。勿論返ってくる訳もなく、ただ心の中でぶつくさと呟く。
「……私、縁堂(えんどう) 麻美(あさみ)。よろしくね?」
沈黙を切り裂くような、優しい一言に赤金は、危うく恋しそうになる。風でふわっと揺れた、縁堂の綺麗な髪に、赤金はうっとりする。
「髪、綺麗ですね……じゃなくて!赤金 真白です」
「2回目……じゃあ、連絡先交換する?」
…急!?でも、女の子の連絡先持ってないし。どうしよう。ってどうするも何も、当たり前だろ!
赤金はケータイをぐっと握りしめ、縁堂をパッと見る。
「は、はい!よろしくお願いします!」

こうして俺、赤金 真白は女の子の連絡先を入手した。


その夜、赤金は『麻美』と書かれた、縁堂の連絡先を眺める。その赤金の顔は、まんべんの笑みで少し気持ちが悪い。
家に帰りベッドでゴロゴロしていた赤金は、スマホを眺めながら時間を潰していた。

その時、あのアプリに気がついてしまう。

「ん?人狼?」
入れた覚えのないアプリに、赤金は少し気味悪く感じた。
ただ、その気味の悪さよりも、好奇心が勝ってしまい、アプリをタップし立ち上げてしまう。真っ黒になった画面をしばらく見つめていると『ようこそ』と赤い文字で表示される。
『これから人狼ゲームを始めます。ルール説明はタップすると出てきますので、よくお読みになってください。では、良い人狼ゲームを』

赤金は、迷うことなく、タップする。

『役職は以下の役職です』

村人 5人
人狼 2人
占い師 1人
霊能力者 1人
狂人 1人
狩人 1人
共有者 2人
呪われた者 1人
見習い占い師 1人
妖狐 1人
背徳者 1人

なお、呪われた者、見習い占い師は能力発動まで、村人として扱われます。


……他にも参加者がいるのか?色々考えながらも、もう一度タップする。

『参加中は、待機場、会議場の二つの場所で過ごしていただきます。会議場では、朝の話し合い、夜の処刑者決定会議と、朝夜使用していただきます。そのほかは、基本は待機場での生活となります』

ワクワクしながら、もう一度タップをしようとして赤金は、手を止める。
「怪しくないか?」
だって、自分で入れた記憶ないし、まずよく分かんないし。赤金は、好奇心と恐怖心の狭間でさまよっていた。
「真白〜!」
「っ!?」
母だと思われる声に、赤金は驚いて思わず、画面をタッチしてしまう。
「あっやばいっ」
何とかしようとした時には、もう時遅し。赤く光る画面と、遠のいていく意識。何が起きているのか理解できないまま、赤金は意識を失った。
「かぁ……さん……」
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