彼女が消えるその瞬間まで
俺は目を一瞬閉じ、もう1度彼女を見た。



彼女は、何が嬉しいのか、楽しそうにニコニコ微笑んでいた。




「翼くん、黄昏時だね」



「あぁ」



もう、陽は沈んでいて上の方は夜に輝いているのに、西の方の空だけはまだ夕暮れの赤のような、そんな色が残っていた。




そんな壮大なドラマを俺たち2人は眺めていた。









俺と姫百合は空を見上げることが多い。




まぁ、もともと俺自身が空を見るのが好きだったが。




この瞬間、俺と彼女の肩が触れ合った気がする。



それは、俺たちの距離が縮まることを意味する。




でも、彼女に近づけば近づくほど、別れの時が辛くなる。






この時、初めてそうなってもいいと思えた。



だって、誰でもない…俺が少しでも彼女と長く一緒にいたいと思ったからだ。






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