嘘は輝(ひかり)への道しるべ
 応接室には、愛輝の父拓真の向かいの席に、夕べの来客の中に居た五十代位のシンプルなスーツをおしゃれに着こなした女性と、三十代後半の少し厳しそうな表情をしている男性が座っていた。

 愛輝と美香は不安気な表情でソファーに腰を下ろした。


「はじめまして、柳田杏子(やなぎだきょうこ)と申します。モデル事務所の社長をしています。」

 その女性は、バックから名刺を取り出すと、愛輝と美香に渡した。


「こっちは、私の事務所でマネージャーをしている原田です」

 杏子の紹介に、原田は「昨日はごちそうさま」と軽く頭を下げた。


 愛輝と美香はこの二人が何の用件でここに居るのか? 見当も付かず黙っていた。


「祐介君がね、うちの事務所で働く事になったの。昨日の愛輝さんのメイクの腕を見て決めたわ」

 杏子が祐介の方へ目をやった。

「愛輝のお蔭で腕を見込まれたよ」


「お仕事決まったのね。良かった。これで日本に居られるのね」

 愛輝が声を上げると、

「やったあ!」

 美香も叫んだ。


 杏子は、愛輝と美香を微笑ましそうに見た後、真剣な表情になった。


「それでね、愛輝さん、突然で驚くかもしれないけど、あなたモデルやってみない?」

 杏子が落ち着いた口調だったが、真剣な表情で愛輝を見た。


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