嘘は輝(ひかり)への道しるべ

 ショップの外に出ると、真二は箱からペンダントを出し、愛輝の首にそっと掛けた。


「ありがとう。大切にする」


愛輝はペンダントに両手を当てた。

本当に大切にしたいと思った。

ペンダントも、この瞬間も……



「そんな大げさな物じゃないだろう?」

真二は照れたように、愛輝から目をそらしそっぽを向いた。


 愛輝には、胸にかけられた光りに、いつか全ての魔法が解けた時、真二は側にいてくれるのだろうか? 

 それとも、愛輝に背を向けてしまうのだろうか?


 愛輝は、この時感じた不安に、もっともっと深い真実が隠されている事など、気付いてはいなかった……


「お兄ちゃん、愛輝さんこっち、こっち」

 のどかが手を振っている。


 愛輝と真二がのどかの側へ行くと、『ドドーン!』と大きな音が響き渡り、シンデレラ城に花火が上がった。


 明るくなった空を愛輝は、真二の隣で見上げた。


 愛輝の横に若いカップルが近づき、愛輝は一歩足を真二の方へ動かせた。

 すると、愛輝の手の甲が、真二の手に触れた。

 二人はそのまま手を動かすこと無く、かすかに触れている手に、確かな温もりを感じていた。

   
  花火は、大きな音と共に空一面に広がった。


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