明日が来るまでそばにいて

最後の学校

今日はいつもより早く起きた。

最後の学校だし早く行こう。
学校に着いたのは7時半ぐらい。
誰もいない教室は居心地が少し悪かった。

屋上に行ったことがないから行ってみよっと。
屋上は出入り禁止だから閉まってると思っ
たけど開いてたから入ることができた。
屋上にでて空を見上げたら雲ひとつ快晴で気分が晴れ晴れした。

校庭を見下ろしたら、サッカー部と野球部が朝練をしていた。


「元気だなぁ」


ぽつりと呟く。

「こんな早くからなにしてんの??」

私に誰かが話しかけてきた。
誰だろう、、。振り返るとそこにいたのは伊勢くん。


「伊勢くん!おはよう!この前はありがとう!」


「おはよ!ううんいいんだ、それより体調大丈夫か?」


「大丈夫だよ!本当にありがとう!」

ズキっ。


あっまたこの前みたいな頭痛だ。

痛い痛い痛い痛い痛い痛い

私が痛がってるのに気付いた伊勢くんは私に駆け寄った。


「おい!斉藤さん!大丈夫か!!!保健室に運ぶからな!」


私がなにも返事しなかったら伊勢くんが私をおんぶして保健室に運んでくれた。
そこからの記憶はない。
多分寝ちゃったんだと思う。

起きたら16時を回ってた。
私どんだけ寝ちゃってたんだろう。
今日で最後なのに授業も受けないで寝てたなんて。。最後まで私はだめだな、、。
あってかまた伊勢くんにお世話になっちゃった。伊勢くんまだいるかな?

保健室の先生が私の様子を見にきた。


「斉藤さん、あなた今日で学校やめるそうね、脳腫瘍は治らない病気ではないの。頑張って治療して治してくださいね、気をつけて帰りなさい。あっそれと、さっきまで伊勢くんが居たわよ。あなたの体調をすごく心配してたわ、多分まだその辺にいるんじゃないかしら。」


それを言って私の荷物を渡してくれた。


「ありがとうございます。さようなら。」


私を見送って保健室に戻って行った。
伊勢くんにありがとうって言わなきゃ。
玄関に向かって歩いてると伊勢くんが立って居た。


「斉藤さん、、おれ話したいことあるんだけどちょっといい?」


いつも笑ってる伊勢くんが急に真剣な顔で話しだすからびっくりした。

「うん、いいよ。」

「じゃあ近くにある公園で話そう。」

「うん。」

公園に行くまで伊勢くんは一言も話さなかった。
おかしい。
そう思った。公園について伊勢くんはブランコに乗って話し出した。


「なぁ、俺にはさ正直に話してほしい。斉藤さんは本当に大丈夫なのか?」

「え、、大丈夫に決まってるじゃん!急にどうしたの(笑)」

私が笑い出した。それでも伊勢くんは笑ってくれない。


「俺聞いたんだ。保健室の先生と斉藤さんが話してるの。病気なんだろ?大丈夫じゃないんだろ?斉藤さんはなんで笑ってられんだよ。もっと人を頼れよ。」


びっくりした。
伊勢くんは私が病気ってこと知ってたんだ。隠し事も通じないんだ。

「俺には全部話してほしい。俺さ斉藤さんの支えになりたい。」

え?支え?どういうこと?

「いま、えっ?って思っただろ(笑)」

「なんでわかったの!」

伊勢くんにはすべてバレてしまう。


「俺さ、ずっと斉藤さんのこと気になってたんだ。友達はたくさんいるのに毎日毎日つまらなそうな顔して、笑わないし、俺なんでかな?って思ったんだ。なんか悩みでもあるのかなって、でも話しかける勇気なんかないし。それでさ斉藤さんが登校中に倒れかけるとこ見て助けなきゃって、この子はなんかあるなって思ったんだ。そして、今日もこの前みたいに頭おさえてたから、、保健室に運んで斉藤さんが起きるの待ってたけどぐっすり寝てたから寝不足かなって思った。だから安心してトイレに行って、帰ってきたら斉藤さんと保健室の先生が話してて、、、全部聞いた。勝手に聞いてごめんな、でも俺、斉藤さんのこと支えたくて、、。」


うそ。。。

伊勢くんは私のこと気にしてくれてたんだ。
私がうつむいたまま伊勢くんの話を聞いてたら伊勢くんが、


「もっと頼っていいんだよ。泣いていいんだよ。強くいる必要なんてないんだよ。病気になったのは斉藤さんのせいじゃない。自分を責めないで。」


伊勢くんのその言葉で泣いた。

病気だって知って初めて泣いた。

人前で初めて泣いた。

自分が悪くないって言ってくれて嬉しくて泣いた。

泣いて泣いて泣いて泣いて。

伊勢くんは黙って頭を撫でてくれた。
すごく暖かい気持ちになった。
私はすべて話した。脳腫瘍のこと。余命のこと。今日が最後の学校ってこと。


「俺、斉藤さんのお見舞い毎日行く。毎日笑顔にさせる。つまんない毎日とか絶対言わせないから。だから俺と一緒にいてくれる?」


こんなこと言われたの初めてだった。

もっと泣いた。

「もぉ〜泣きすぎだよ(笑)俺のことは直哉って呼んでよ、俺も美羅って呼ぶからさ」


伊勢くんが笑いながら言った。

私は涙を必死に拭いて笑いながら

「ありがとう、なおや」


なおやは私を抱きしめた。私はまた泣いた。
帰りはおんぶして家に送ってくれた。

ありがとう。。。

直哉には感謝の気持ちしかないよ。。



直哉は私をたくさん笑顔にしてくれた。

直哉は私に楽しい毎日をくれた。

直哉は私を大切にしてくれた。



私は直哉になにかしてあげられたかな?

直哉は幸せだったかな?

直哉にまた会いたい。


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